NHKのBSプレミアムドラマ『隠れ菊』(全8話)の放送が始まりましたね。
2話まで視聴したところで、疑問や気になることもあり原作を読んでしまいました。
原作を読んでの感想は「これって全8話で収まるの!?」ってことです。
原作がめちゃくちゃ濃かった!
人の関係や感情が入り組んでて複雑なんです。
それでこのブログでは、原作を読んでわかったことなどをネタバレを含んだ感想と共に記します。
なお、NHK BSドラマ『隠れ菊』を見逃した方は、
再放送が、NHK BSプレミアムで 毎週土曜日 23:45 ~ 翌日 0:35 です。
そして、本放送は、
毎週 日曜日 NHK BSプレミアム 22:00~22:50
となっています。
BSドラマ『隠れ菊』公式のあらすじは?
まず、NHK公式ページから公開されているストーリーを確認しましょう。
【ストーリー】
上島通子(観月ありさ)は昭和初期から続く浜名湖畔の料亭『花ずみ』に嫁いだが、亡くなった先代の女将キク(松原智恵子)からは「あなたは家庭を守るのが仕事だから」と、料亭からは一切遠ざけられていた。2人の子を育てながら17年間、母として平凡な日々を過ごしていた通子の元に、夫・旬平(前川泰之)の愛人を名乗る女性・矢萩多衣(緒川たまき)が現れる。「ご主人をいただきに参りました」夫の署名入りの離婚届まで持参して、多衣はそう告げた。
通子は、夫・旬平にある提案をする。「離婚届の替わりに『花ずみ』の女将をやらせてもらいます」しかし、その料亭『花ずみ』は通子の知らぬところで多額の負債を抱えており、倒産してしまう。
そこで、通子は愛人多衣から金を借り、自分を裏切った夫を板前に雇い、自分に思いを寄せるゼネコン会社社長・笠井(筒井道隆)の協力で新生『花ずみ』を誕生させる。通子の人生をかけた戦いが始まるが、その前には次々と難問が振りかかる。
公開ストーリ-だけを見ても、ちょっとツッコみたいことが、たくさんありますよね!?
- 通子は愛人多衣から金を借り → は?
- 自分を裏切った夫を板前に雇い → へっ?
- 自分に思いを寄せるゼネコン会社社長・笠井(筒井道隆)の協力で新生『花ずみ』を誕生させる。 → ほ???
・・・っと、こんな感想です。
何がしたいんだ、通子??
そして、1話、2話を視聴すると余計に疑問も出てきます。
- 多衣はなぜ、通子のところで旬平が働くことを認めたのか?
- なぜ、恋敵である旬平の妻の通子に、多衣はお金を貸したのか?
- なぜ通子は、そうやって作った新しい花ずみに、元夫の旬平を雇ったのか?
- そして、なぜ義母キクは絵を湖に沈めたのか?
第2話だけでも「なぜ?」がたくさんです。
起こっている事柄の裏側で、何が起こっていたか?
原作からのネタバレでご説明します。
BSドラマ『隠れ菊』第2話の疑問と原作ネタバレ
まずは4つの疑問を原作と照らし合わせながら見ていきます。
その事柄の裏で何が起こっていたかもネタバレしますので、ドラマを見るのに先入観を持ちたくない方は飛ばしたほうがいいかも?
それでは、いきます。
多衣はなぜ通子のところで旬平が働くことを認めたのか?
普通に考えると略奪した男を元妻のところで働かせるなんて不安でしょうがないと思うのですが、多衣は通子の提案を了承しました。
それは、花ずみの倒産で旬平が腑抜けてしまったからです。
旬平をしっかりさせるには、料理の腕をふるうための新しい”場”を与えることがベストです。
でも、それを自分が与えると、旬平と対等な立場ではなくなる。
そのため、元妻の側で働くという傍から見ると奇妙な提案を、多衣は飲んだことになります。
そして、その”場”を作るために必要なお金として、多衣は通子に“投資“することにしたのです。
また、このとき通子に提示された婚姻届を拒否した形の多衣でしたが、実は後に、通子の知らない多衣の”切り札“となっていきます。
なぜ、恋敵である旬平の妻の通子に、多衣はお金を貸したのか?
多衣は恐れていました。
花ずみの倒産のこともあり旬平と通子が離婚したとしても、旬平の心がこの新しい顔を見せ始めた通子の元に帰り、自分から離れていってしまうのではないか? いや、元々が通子の方に心があるのではないか、と。
通子が提案した”投資”は、多衣にとって愛する旬平が立ち直るための”場”を作ることでもあります。
通子の借金を多衣が拒否したとしても、通子は別の誰かから借りて旬平に”場”を与えます。
そうすると旬平を立ち直らせたのは通子ということになります。それは多衣の矜持が許しません。
多衣にとって旬平のことを一番に考えているのは元妻ではなく、自分でなければならないのです。
多衣は通子の言う投資を認めて、通子に三千万円を貸しました。
でも一番の問題は、そこではありませんでした。
多衣がそのお金をどうやって作ったか。
多衣は通子に、この提案の回答を一日待ってもらいました。
その間にしたことが、ある人物に身を売り、お金を用立てたのです。
そのお金を通子に貸すにあたって、そのことを通子に多衣はひとことも言っていません。
それが多衣の”切り札“だったからです。
なぜ、多衣は通子のためにそこまでするのか?
それは通子のためではありませんでした。
多衣はこう考えました。
「自分からお金を借りれなくても、通子は笠井から借りて、結果は変わらないだろう。
その上、旬平は自分の元から去るかもしれない。
だったら、通子には自分から借りてもらって、恩を売って優位に立ちたい」
そして、
「私がここまで身を削ってあげたことで、今のあなたがいる。私の犠牲であなたの幸せがあるのよ」
という、通子に対しての、多衣の隠された優越感のためにしたことでした。
これがバレた時、現に通子は多衣に負けを喫したような気になり、「そんなことは望んでなかった」と言いますが、逆に多衣から「本当は分かっていたくせに、いい子ちゃんぶるな」と詰られます。
実のところ、通子も後日には薄っすらお金の出どころに感づいていました。しかし、心の中で見て見ぬふりをしていたのです。
そしてこの後、この二人の勝負は「どれだけ自分が犠牲になれるか」で、優劣が決まっていきます。
相手が犠牲を払い、守られた方が「負け」なのです。
しかし自分の”犠牲”は相手には知らせません。密かに、心のなかで恩を着せ、優越感を持っているのです。
水面下で二人のプライドが火花を散らせます。
なぜ通子は、そうやって作った新しい花ずみに、元夫の旬平を雇ったのか?
素人の通子がいきなり女将を始めても、実際には料亭が上手くいくはずがありません。そこで、花ずみの板長であった人間を雇うというのは理にかなってはいます。離婚した夫ということを除けば。
ただ他に当てもなく、そこに人材がいたからという理由と、子どもたちの養育費を払ってもらうためにも働いてもらわないといけないという理由。
理由付けは何でもできます。
しかし本音のところでは、通子は旬平を助けたかったのです。
多衣に投資と称して婚姻届を売りに行った通子でしたが、まだ旬平に心は残っていました。
多衣と旬平が結婚した後も、何ともないフリをしていましたが、心は残っていました。
でもプライドがそれを認めなかったのです。
物語後半で旬平に「帰ってきて」と本音を言うころには、そんな自分の心を認めていました。
通子の言葉を聞いても旬平は帰ってきてくれませんでしたが。
なぜ義母キクは絵を湖に沈めたのか?
あの絵は、キクが料亭花ずみを大きくした賞状のようなものでした。
それと同時に、汚職事件の証拠でもあったのです。
パトロンである政治家の汚職事件が発覚した時に、キクは証拠隠滅のために絵を湖に沈めました。
そしてまた、通子も汚職事件に巻き込まれることになります。
キクは証拠を隠すことを選び、それでも料亭花ずみは滅んでいきました。
しかし通子は正々堂々と正直に経緯を話そうとします。自分には後ろめたいことはないのだからと。
その結果は・・・。
ここは、原作を読んでいただきたいところですね。
BSドラマ『隠れ菊』原作よりネタバレ感想
原作の通子のイメージは、芯は強いけど見た目はもう少し地味な感じです。
観月ありささんでは、華やかすぎるかも?
でもドラマから入って見てみると、芯のある女性の姿など、けっこう合っているような気がしてきます。
そんなドラマの中で、キーになるセリフが出てきました。
「あんな切り札を隠していたなんて。卑怯ですよ」
これは第2話で通子が多衣に言うセリフです。
多衣が愛人であることを通子に暴露して「旬平をもらう」と”宣戦布告”したときに、料亭花ずみ(はなずみ)が既に倒産目前であったことを隠したままで、多衣がその駆け引きを仕掛けていたことを指しています。
しかし原作を読むと、状況は違えど、この後、このセリフは何度もこの二人の間で交わされるのです。
切り札。
お互いがそれを隠し持ったまま、二人は水面下で戦い続けています。
でも二人は敵というわけではありません。どちらかというと味方に見えます。
実際ドラマの2話でも、多衣が通子の女将としての才能を認めているシーンがあります。
また、このシーンでもそうです。
3000万円を渡し、「慰謝料として」利子は不要と言う多衣。
利子を払うという通子。
それに対して、
「通子さん、商売人としては甘いわ。ビジネスとして、今あなたはひとつ負けたんですよ」
多衣は先輩として通子に指導しています。
「無利子、無担保で工面してきたから」利子分の儲けは全て多衣のものになるのだと”商売”について諭します。
本妻と愛人の立場であったはずなのに、敵に塩を送るようなものにも見えます。
しかし原作では、この後も、ずっと多衣は通子を助けているのです。
出資者である以上は、通子に成功してもらわないと出資金が回収できないという理由もあります。
ですが、時には自分が悪役になって、通子に利を取らせようとします。
これは、精神的な面で「恩を売る」「恩を着せる」という、二人の間の火花のせいでもありますが、この二人の間にはいつの間にか友情が存在していました。
花ずみを成功させるという目的の、戦友のようなものかもしれません。
通子はいつの間にか、「敵」であった人々を味方につけて強くなっていくのです。
原作では、通子と多衣、それに義父の愛人だった鶴代の駆け引きのような掛け合いが描かれています。
通子は、立場的に敵対しているはずの女たちを味方につけていきます。この展開は少年ジャンプの王道漫画のようです。
しかし違うのは少年ジャンプの王道漫画では「昨日の敵は今日の友」を地で行くのですが、こちらの女たちは完全に味方というわけでもなく、その関係性には”駆け引き”が存在しています。
素顔を隠して敢えて知らないふりを装い、そのことに優越感を持っていたら”切り札“が出て来る。後から相手のほうが一枚上手だと知りプライドは粉々に砕かれる。でも、素知らぬフリをしてまた仮面をつけて相対する・・・。
あざ笑われていると思っていた事柄の裏側で、相手の女もまた自分の敗北を感じながらもプライドを保とうとしている。
そんな描写が続きます。
それでもやはり敵ではないのです。
完全に信頼できる味方というわけでもない。でもある意味では信用できる味方なんです。
この複雑さは説明しにくい! ぜひ原作を読んでいただきたいです!
「昨日の敵は今日の友」の意味が男と女ではこうも違うのか、ということ。
男は単純でいいですね。原作の「隠れ菊」を読むと、そう思ってしまいます。
作中の言葉の中で、
「私、あなたの愛人だけじゃなく、あなたのお父さんの愛人とも手を繋ぐことにしたのよ」
というセリフがあります。
原作を読んで感じたことは、「女は強か」です・・・。
ドラマ第3話以降のネタバレ予想は?
花ずみの元板長で現在はライバル店の老舗料亭『勝浪』の板長となっている前田秀次は、花ずみに恨みがあり妨害工作をしますが、原作ではその共犯者で愛人の八重という女性がいました。
しかし2話でも出てきてないということは、ドラマ版ではおそらく「八重の役」を、料亭花ずみの仲居頭で現在の花ずみも手伝っている堀口千秋にさせるつもりでしょう。
ドラマが全8話で尺が短いのでしょうがないからかもしれませんが、ちょっと残念です。
原作では、花ずみを裏切るようなことをしていた八重は罪悪感もあり、それでも前田秀次と離れられないという役どころで、ちょっとしたことから刃傷事件を起こしてしまいます。
その事件を、今後、渡辺典子さんが演じる堀口千秋が起こすことになるのだと思います。
NHKドラマ『隠れ菊』の原作と最終回は?
BSドラマ『隠れ菊』の原作は、連城三紀彦 作の『隠れ菊』です。
原作では次のような事柄が、文字を使ってたっぷりと表現されています。
通子と多衣の関係とそれぞれの想いと駆け引き。奇妙な友情。
通子と旬平、多衣と旬平の間の絡み合った感情。
通子と笠井の間の関係。
老画家大角六扇に対する通子の感情の動き。
などなど、小説でじっくり読まないと全8話のドラマでは表現が難しいのではないかと思います。
それだけ原作が濃かったのです。
そのためドラマでは、カットされるシーンも多そうです。
全8話では、多衣の元夫秋葉と旬平のくだりもカットかな?と考えます。秋葉は最後に連なる重要な役どころだとも思うんですが。
カットしてしまうと、ドラマでは笠井を最後どうするつもりなんだろう?
笠井が結局どうなったのかは、原作にも書かれていません。しかし、秋葉とのくだりがないと、最後に旬平が通子の背を押すような行動をとる理由付けに欠ける気がします。
原作は、人々の関係が絡み合ってるので、少ない言葉で説明するのは難しいですね。
これは、読んでいただかないと!
それに、ドラマを見ていてスルーしてしまった事柄も、原作を読むと「あれは、こういうことを言いたかったのか!」とスッキリしてきますので、ぜひ『隠れ菊』原作を読まれることをお勧めします。
まとめ
NHK BSドラマ隠れ菊を視聴して、原作を読んだ感想も含めて書きました。
原作のボリュームを考えると全8話で、どのように収束させるのか、気になります。
また、心理描写を考えると、モノローグに頼らずにどうやってドラマでは表現するのかも楽しみです。
ドラマの補足に原作ネタバレを書きましたが、ぜひ原作も読むことをお勧めします。
原作読後には、「こんなブログ読むより、さっさと原作読んでおけばよかったよー!」って思うこと請け合いですから(笑)